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歯周病と全身疾患の関連性
歯を失うことにつながる歯周病は、お口の中だけの病気だと思われがちですが、近年では、全身疾患との関連性も指摘されるようになりました。
こちらでは東京都多摩市の歯医者、永山駅より徒歩8分の歯周病専門医がいる「福嶋歯科医院」が、歯周病と全身疾患の関連性についてご説明します。
歯周病と全身疾患
歯周病にかかり悪化させてしまうと、歯周病原菌だけでなく歯周病菌が産出する毒素が血管を通り、全身に運ばれていきやすくなります。すると次のような重篤な疾患を招く可能性があると報告されています。歯周病治療は「歯を守る」だけでなく、「全身の健康を守る」治療でもあるのです。
歯周病にかかっていることでリスクが高まる全身疾患
こちらは歯周病に罹患している方が健康な方と比べてどれくらい全身疾患になりやすいかを示した表です。
※表は左右にスクロールして確認することができます。
カテゴリー | 疾患 | 倍率 | 歯周病治療による改善度など |
---|---|---|---|
心疾患 | 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞) | 1.59倍 | 「善玉コレステロール値」や「C反応性タンパク質」ほか「動脈壁の状態」の改善がみられます |
冠動脈性心疾患(動脈硬化) | 1.51倍 | ||
早産 低体重児出産 |
早産 | 1.70倍 | 妊娠中期の安定期に歯周病治療を行うことが大切です |
低体重児出産 | 1.82倍 | ||
妊娠高血圧 | 1.61倍 | ||
肺炎 | 肺炎死 | 3.90倍 | 肺炎以外にも呼吸器系の疾患のリスクの低下がみられます |
リウマチ | リウマチ | 2.00倍 | 歯周病治療により改善傾向が認められますが、リウマチ治療のため薬が免疫力を低下させ、さまざまな細菌に感染しやすくなるので注意深い治療が必要です |
腎臓病 | 慢性腎臓病 | 1.60倍 | 外科的ではない歯周病治療を行うことでも改善が報告されています |
腎機能低下 | 2.24倍 | ||
肝臓病 | 肝機能障害 | 2.30倍 | まだ十分なデータがありません |
非アルコール性脂肪 | 2.1~3.9倍 | 外科的ではない歯周病治療を3ヶ月行うことでAST、ALTの値が改善したという報告があります | |
肝炎 | |||
糖尿病 | 2型糖尿病(生活習慣による糖尿病) | 2.60倍 | 歯周病の外科処置でHbA1cが0.5%も改善したという報告があります |
耐糖能異常(糖尿病予備軍) | 2~3倍 |
歯周病にかかるリスクを高める病気や生活習慣
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糖尿病
糖尿病が悪化すると歯周病も悪化することがあるとの報告があります。糖尿病の方はそうでない方にくらべて1.5~2.6倍の確率で歯周病を発症しています。反対に歯周病の治療により糖尿病の検査数値の改善がみられますので、糖尿病と歯周病には相互関連の可能性があると言われているのです。
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喫煙習慣
喫煙歴の長さにかかわらず、禁煙すると歯周病のリスクの低下がみられます。喫煙者の歯周病発症率は非喫煙者にくらべ2~8倍です。たばこの煙に含まれるさまざまな物質により毛細血管が収縮し、炎症を抑えるための免疫力も抑えられてしまうためだと考えられます。全身の健康のためにも歯周病の治療のためにも禁煙をおすすめします。
負の病気の連鎖『メタボリックドミノ』
皆さんは「メタボリックドミノ」という言葉を聞いたことはありますか?
メタボリックドミノとは1つの病気が引き金となり、次の病気に連鎖していくドミノだおしのような状態のことを言います。
全てが1つの病気からつながるというわけではありませんが例えば、「生活習慣→肥満→高脂血症」や「高血圧→脳血管障害」といった流れがあるのはごく自然な流れと捉えることができるのではないでしょうか?
高血圧症や肥満は「脂肪肝」や「腎臓疾患」「糖尿病」といった病気を誘発するといった具合に病気が連鎖反応のように発生、進行するのがメタボリックドミノです。メタボリックドミノを連鎖させる原因のひとつとして遺伝や体質もありますが、大本を辿ると「生活習慣」が原因だということが分かります。
生活習慣は毎日のちょっとした行動の繰り返しです。例えば 『お味噌汁の塩分を控える』 や 『30分だけ運動をする』
などです。
この流れを加速させる原因として個人個人が持っている体質であったり遺伝であったりというのもあります。
近年このメタボリックドミノの最初の段階に位置するのが「虫歯」や「歯周病」といった歯医者さんで治療するような病気なのではないかというふうに考えられるようになってきました。
虫歯も歯周病も『歯磨き』という生活習慣が不規則だったり不十分だったりすることにより起きている細菌感染性の生活習慣病です。
歯を失う原因の42%が歯周病、32%が虫歯で合計すると74%が細菌感染ですが歯ブラシをきちんとできるようになることで予防も十分可能です。
つまり、正しいブラッシングを習慣化し、歯周病や虫歯といったお口の病気を予防していくことが、将来起こりうる全身の病気を予防することになるのです。
次に多摩市民がどういった理由で死亡しているのかを見て行きましょう。
1位は悪性新生物、いわゆる「癌」でついで心疾患が多く、3位が肺炎となっています。
一方、日本歯周病学会の統計調査を見てみましょう。
歯周病と口腔ガンの関係
システマティックレビューと呼ばれる多くの研究結果をまとめた研究では歯周病にかかっていることで口腔ガンのリスクが2~5倍以上に跳ね上がることが分かりました。参考文献※1
また11編の研究結果をまとめた別の研究でもやはり歯周病にかかっていることで口腔ガンのリスクが2~5倍以上になることが分かっています。参考文献※2
さらに喫煙や飲酒といった要素を排除して行われた研究でも歯周病の重症度によって口腔ガンが起きやすくなることが分かりました。参考文献※3
このような歯周病と口腔ガンの関連性の背景には「ヒトパピローマウィルス(HPV)」が関係しているのではないかと考えられています。HPVは定期的に歯医者さんを受診してクリーニングなどを行うことで減らすことができますが、お口の清掃状態が悪く、HPVが陽性だった患者さんは口腔ガンになる確率が4倍も高かったという結果が出ており、特に「舌ガン」のリスクが高まります。参考文献※4
なぜ歯周病やウィルス感染が舌癌などの口腔ガンの発生に繋がるかというと、感染を起こすことで体の中で「サイトカイン」や「プロスタグランジン」といった名前の化学物質が発生するからです。その化学物質の1つに「TNFα」というものがあり、これは癌の発生を促すことが知られており最近の研究では、歯周ポケットが化学物質や細菌由来の毒素の貯蔵庫の役割を果たしていることも分かっています。参考文献※5
こういった研究結果からも歯周病の治療や定期的な歯科検診、クリーニングが口腔ガンの予防に繋がると言えるのではないでしょうか。
参考文献※1 (Javed F, Warnakulasuriyab S. Is there a relationship between periodontal disease and oral cancer A
systematic review of currently available evidence. Crit Rev Oncol/Hematol 2016;97:197-205.)
参考文献※2 (Ye L, Jiang Y, Liu W, Tao H. Correlation between periodontal disease and oral cancer risk: A
meta-analysis. J Cancer Res Ther 2016;12:C237-C240.)
参考文献※3 (Moraes RC, Dias FL, Figueredo CM, Fischer RG. Association between chronic periodontitis and
oral/oropharyngeal cancer. Braz Dent J 2016;27:261-6.)
参考文献※4 (Mazul AL, Taylor JM, Divaris K, Weissler MC, Brennan P, Anantharaman D, Abedi-Ardekani B, Olshan AF,
Zevallos JP. Oral health and human papillomavirus-associated head and neck squamous cell carcinoma. Cancer
2017;123:71-80.)
参考文献※5 (Tezal M, Sullivan MA, Reid ME, Marshall JR, Hyland A, Loree T, Lillis C, Hauck L, Wactawski-Wende J,
Scannapieco FA. Chronic periodontitis and the risk of tongue cancer. Arch Otolaryngol—Head Neck Surg
2007;133:450-4.)
歯周病と肺がんの関係
アメリカの権威ある医学誌 Journal of Periodontologyに報告された30万人以上を対象に行われた研究によると「歯周病になっている」ことが「肺ガン」のリスクを1.24倍上昇させ、歯周病を誘因する飲酒や喫煙を行っている人は1.36倍上昇していることが分かりました。アメリカでは毎年、肺がんによって15万人以上の患者さんが亡くなっており、中でも女性の歯周病による肺がんのリスクが高いことが分かっています。参考文献※1
歯周病によって狭心症のリスクが1.59倍、腎機能障害のリスクが2.3倍、肝機能障害のリスクが2.6倍に跳ね上がり、肺炎に至ってはリスクが3.9倍にもはねあがります。
つまり『歯周病になっている」というだけで多摩市の方々の死亡原因の2位、3位、4位、8位、9位の病気になりやすくなってしまうということなのです。
実際に動脈硬化を起こした患者さんの心臓の血管からは高頻度で歯周病菌が検出されています。
参考文献※1 (Periodontal Disease and Incident Lung Cancer Risk: A Meta‐Analysis of Cohort Studies)
歯周病とアルツハイマーの関係
従来、アルツハイマー病の原因となっている異常なタンパク質「アミロイドβ」は脳の中で作られていると考えられていました。しかし、近年に研究からこの異常タンパク質が実は血流の中で作られた後に脳内に入り込んで神経細胞の機能を損なわせることが分かってきました。
2013年にJournal of Alzheimer’s Diseaseに報告された研究によるとアルツハイマーで亡くなった患者さんの10人中4人の脳内から歯周病菌由来の毒素が見つかりました。しかし、同時期に亡くなった健常者の脳からは検出されませんでした。この歯周病由来の毒素はLPSと呼ばれ歯周病菌の体そのものを構成している物質です。参考文献※1参考文献※2
さらにこの研究では4大歯周病菌のひとつ「P.g.菌」が出すジンジパインという毒素が脳内に感染しないようにすることで「アミロイドβ」が作られるのを抑制し、神経の炎症を抑え、記憶を司っている海馬を守ることができたとも報告しています。
参考文献※1 (Journal of Alzheimer’s Disease vol. 36, No.4 665-677, 2013)
参考文献※2 (Science Advanced 23 Jan 2019: Vol.5 No.1)
歯周病と腎臓病の関係
イギリスで行われた研究では腎臓の病気と歯周病に強い相関関係があることが明らかとなってきました。この研究では10年間に渡って追跡調査を行っており、その結果、腎臓の病気によって突然死した患者さんの41%に歯周病があったことが分かっています。また歯周病にかかっていない患者さんでも糖尿病を患っている患者さんの死亡率が43%になることも分かっています。参考文献※1
歯周病が腎臓の病気を悪化させる原因として考えられているのが、免疫反応の過程で体内で作られる「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質です。炎症性サイトカインは歯周病菌などへの感染が持続することで増加し細胞にダメージを与える性質があり、腎臓の濾過機能を担う繊細な細胞はより影響を受けてしまいます。
参考文献※1(Journal of Clinical Periodontology, Vol.43, issue2, 2015)
歯周病と糖尿病の関係
日本糖尿病学会は糖尿病と歯周病は相互に負の影響を与えるとのステートメントを出しています。糖尿病患者さんは健常者と比較して歯周病であることが多く、より重症化していること歯周病患者様が糖尿病である割合が多いからです。また重度の歯周病を治療せずに放置することが血糖値に悪影響を与える可能性がある一方、歯周病治療を行うことでHbA1cが改善する可能性があることも述べています。同じく日本歯周病学会も歯周病であることが糖尿病のリスクを2.6倍も引き上げるとしており双方の病気の早期発見、早期治療が大切です。
歯周病と心臓の病気の関係
歯周病の原因となるプラークは一般的に歯や歯茎の周りに出来ることが知られていますが、血管の中にもプラークが出来ることはご存知でしょうか。口の中にできるプラークとは異なり血管の中にできるプラークは血液中にある成分の他に脂肪やコレステロール、カルシウムなどで出来ています。こうして出来た水に溶けにくい塊は心臓に栄養を送っている細い血管などを詰まらせ心筋梗塞などの病気を引き起こします。
ハーバード大学の発表によると歯周病患者さんは狭心症や心筋梗塞といった致死的な血管の病気になる確率が2~3倍高く、実際に2004年に行われた研究では動脈硬化を起こし亡くなった方の心臓から高い確率で「P.g.」や「T.d.」といった歯周病菌が発見されています。
また最近では悪性新生物(癌)になりやすくなる原因の一つではないかという研究も進んできています。これは歯周病菌によって細胞の中の遺伝子が「メチル化」を起こすことによると考えられています。メチル化は過度の飲酒などによっても引き起こされますが、1度メチル化してしまった遺伝子は元に戻ることはなく、体の中に蓄積していくと言われています。
メタボリックドミノとはこのように単純だった病気が次の病気へと連鎖し、健康的な生活を脅かすだけではなく死亡率までも上昇させてしまうドミノ倒しのことなのです。
多摩市のお住いまいの方も全国平均と似て癌や肺炎、心臓の病気でなくなる方が多くを占めていますのでしっかりと歯周病の予防と早期発見・早期治療をして健康的な生活を送ってください。
歯の本数と死亡リスク
残っている歯の本数が直接寿命に影響を与えているというデータもあります。歯の数は親知らずの有無などにより個人差はありますが平均的に28本あり全てが調和して1つの臓器となっています。実は歯の本数が少なくなることによって死亡のリスクが上昇するといった報告も出てくるようになりました。
歯が少ないこと自体が原因なのか歯が抜けるくらい「虫歯」や「歯周病」を放置し続けたことが原因なのかはここからは分かりませんが、どちらにしても歯が抜けるような状態にならないようにすることが大切です。
30歳を過ぎたら歯周病の精密検査を行いましょう。
多摩市の人口統計を見てみると40代を中心として60代、30代の人口が多く20歳以下の人口割合も比較的多いため街としては活気のある街であると言えます。
一方で多摩市に限らず日本全国民の歯が抜けた本数を年齢別に見てみましょう。40歳代の1.2本を皮切りに50歳代、60歳代と年齢を重ねるごとに加速的に歯を失っています。これは多摩市だけでなく川崎市、町田市、八王子市など当院のある多摩市の周辺の地域の方々にもあてはまります。
歯は全部で28本あり70歳代で平均11.9本(約半分)もの歯を失っているという事実があるわけですが、当然70歳になっても1本も歯が抜けてない人もいれば総入れ歯の方もいます。その違いはどういうところから生まれるのでしょう?
当院は歯周病治療を専門的に行っている歯科医院ですので歯周病の患者様が多くいらっしゃいますが、一方でとても健康な方も多く来院されています。中には70代、80代で全部歯が残っている方も多くいらっしゃいます。
こういった方々に共通することは「健康」にというものに興味をもち、ご自身の生活をより豊かに実りあるものにするために「歯の健康」を維持することに価値を見出している方々です。
当院にいらした歯周病患者様がよく口にする言葉として「もう少し早く気づけばよかった」「もっと早く歯医者に来てればよかった」というのがありますが、健康というものは失って初めて気づくところが多く、ましてや歯周病は痛みなく静かに進む病気ですのでその大事さに気づかれる方が少なくありません。
しかし、これまでお示した研究データや統計を見る限り、もし長生きして美味しいご飯を長く楽しみたい、健康的に超寿命を全うしたいとお考えであれば歯が抜け始める40歳代より手前の段階、30歳代のうちから歯周病のケアや予防、必要であれば治療を初めていくことを強くおすすめします。
30歳を過ぎたら歯周病の精密検査を行いましょう!